「親の年金が月10万円なら、家賃5万円の賃貸審査に通るのか」「年金はいくらあれば高齢の親でも部屋を借りられるのか」と不安になる方は多いでしょう。
先に結論をお伝えすると、民間賃貸に共通する「年金○万円なら合格」という基準はありません。同じ年金額と家賃でも、物件、貸主、管理会社、保証会社の商品、預貯金、緊急連絡先、過去の支払い状況などによって結果は変わります。
この記事の結論
- 「年金は家賃の3倍あれば収入条件をクリア」は共通ルールではない
- 部屋探しの予算は、額面年金ではなく毎月使える金額から組む
- 審査では年金額だけでなく、総住居費・証明書類・連絡体制も確認される
- 年金が少ないときは、家賃を下げる以外にも貯蓄、親族支援、UR、公的な居住支援を検討できる
執筆者の保科 レン(レントさん)は、家賃保証会社に15年以上在籍し、複数社で審査・契約・督促・回収に携わり、1,000社を超える不動産会社、管理会社、貸主を担当してきました。この記事では、保証会社に共通しない数字を断定せず、実際に部屋を探すための計算方法と準備手順を整理します。
年金はいくらあれば賃貸審査に通るのか
民間賃貸には一律の年金基準がない
民間賃貸では、保証会社や貸主が審査基準をすべて公開しているわけではありません。「年金月15万円なら家賃5万円まで」「家賃の3倍の収入があれば大丈夫」といった数字は、家計を考える際の参考にはなっても、全社共通の合格基準ではありません。
審査結果を左右する主な項目は次のとおりです。
- 家賃・共益費などを継続して支払えるか
- 年金その他の収入を客観的な書類で確認できるか
- 申込内容と提出書類に食い違いがないか
- 本人と緊急連絡先に連絡が取れるか
- 貸主が求める見守りや緊急時対応の条件を満たせるか
- 利用する保証商品で確認対象となる支払い履歴に問題がないか
そのため、年金額だけを見て「通る」「落ちる」と断定することはできません。反対に、年金が多くても高い家賃を選んだり、申込内容に不備があったりすれば否決されることがあります。
「審査の基準」と「無理なく払える予算」は分けて考える
審査に通る金額と、入居後も無理なく払い続けられる金額は同じではありません。審査を通過しても、医療費、介護費、光熱費、更新料などが重なれば生活が苦しくなることがあります。
部屋探しでは、先に生活可能な予算を決め、その範囲内の物件で審査条件を確認します。「通る上限」から探すのではなく、「払い続けられる総住居費」から逆算するのが安全です。
年金額を正しく確認する3つの数字
年金の「月額」を確認するときは、額面と実入金を混ぜないことが重要です。申込書に記載する数字と、家計を組む数字は目的が異なります。
| 確認する数字 | 主な確認書類 | 使い方 |
|---|---|---|
| 年額 | 年金額改定通知書、源泉徴収票など | 申込先の指示に従い、年収または年額の証明に使う |
| 1回の振込額 | 年金振込通知書、通帳 | 通常は2か月分。月額と取り違えない |
| 1か月に使える金額 | 実際の振込額、その他の固定収入、毎月の固定支出 | 家賃予算と入居後の家計を考える |
日本年金機構によると、改定後の年金額は「年金額改定通知書」、変更後の振込額は「年金振込通知書」で確認できます。2026年度分は2026年6月3日から10日に順次発送され、ねんきんネットでも確認できます。詳しくは日本年金機構の案内をご確認ください。
家計用の月額は「実際の振込額÷2」で確認する
たとえば、2か月ごとの実際の振込額が21万4,000円なら、家計上の月額は約10万7,000円です。一方、通知書の年額が144万円なら、申込書上の年金月額を求める際は12万円となる場合があります。
どちらを申告するかは申込先の指定によります。自己判断で有利な数字だけを記載せず、年額・振込額・控除後の実入金が分かる書類を用意して確認してください。障害年金・遺族年金など課税関係が異なる年金は、制度ごとに収入算入の扱いが違うことがあるため、申込先へ事前確認が必要です。
年金額別の家賃目安は「総住居費」で計算する
次の表は、毎月の実入金額の25%と30%を計算した当サイト独自の予算試算です。保証会社や貸主の合格基準ではありません。医療費、介護費、借入返済などが多い場合は、25%より低く設定してください。
| 毎月の実入金額 | 25% | 30% | 探し方の注意 |
|---|---|---|---|
| 8万円 | 2万円 | 2.4万円 | 民間だけでなく公営住宅や居住支援も同時に確認 |
| 10万円 | 2.5万円 | 3万円 | 共益費・見守り費を含めて比較 |
| 12万円 | 3万円 | 3.6万円 | 家賃4万円でも総住居費を再計算 |
| 15万円 | 3.75万円 | 4.5万円 | 医療・介護の固定費が高ければ下げる |
| 18万円 | 4.5万円 | 5.4万円 | 更新料など年払い費用も月割りで加える |
| 20万円 | 5万円 | 6万円 | 年金額だけで審査通過とは判断しない |
家賃ではなく毎月の総額を入れる
予算計算に入れる住居費は、募集図面の「賃料」だけではありません。
- 家賃
- 共益費・管理費
- 月額保証料や口座振替手数料
- 見守り・駆け付けサービス料
- 町内会費、駐車場代など毎月必ずかかる費用
- 更新料・保証更新料・火災保険料を月割りした金額
たとえば実入金が月12万円で、家賃4万円、共益費3,000円、月額保証料1,000円、見守り費1,500円なら、総住居費は4万5,500円です。実入金の約38%になるため、「家賃4万円」だけを見たときより生活余力は小さくなります。
注意:上の25%・30%は生活予算を組むための試算です。「30%以内なら審査に通る」「30%を超えたら必ず落ちる」という意味ではありません。
公開されている基準は制度ごとに違う
民間保証会社の非公開基準と、URや公的な保証制度の公開条件を混同してはいけません。以下は2026年8月時点で確認できる各制度の条件です。
UR賃貸住宅は単身者の収入基準を公開している
UR賃貸住宅は、将来も継続すると認められ、課税対象で証明できる年金等を平均月収額に含めています。単身申込みの基準月収額は次のとおりです。
| 単身者の家賃 | URの基準月収額 |
|---|---|
| 6万2,500円未満 | 家賃額の4倍 |
| 6万2,500円以上20万円未満 | 25万円 |
| 20万円以上 | 40万円 |
ただし、収入基準に届かなくても、一定期間の家賃等を前払いする制度、家賃の100倍以上の貯蓄を使う基準、親族による家賃補給などの特例があります。高齢者向けの特例にも条件と必要書類があります。最新条件はUR賃貸住宅「お申込み資格」で必ず確認してください。
高齢者住宅財団の保証制度は月収50%以下が原則
一般財団法人高齢者住宅財団の家賃債務保証制度では、共益費・管理費を含む月額家賃が月収の50%以下であることを条件としています。ただし、親族等からの援助額や預貯金額によって利用できる場合があります。
これは同財団と基本約定を結んだ対象住宅で同制度を使う場合の条件であり、民間保証会社すべての基準ではありません。緊急連絡先、過去の家賃不払いによる退去歴、信用取引の状況などによって利用できない場合もあります。詳細は高齢者住宅財団のFAQをご確認ください。
セーフティネット登録住宅も無審査ではない
セーフティネット登録住宅は、登録された受入対象の住宅確保要配慮者について、その属性を理由に入居を拒まない住宅です。高齢者向けとして登録されていても、家賃の支払能力、保証、緊急連絡先などの確認がすべてなくなるわけではありません。
また、家賃や保証料の軽減制度は全国一律ではなく、対象住宅、所得要件、自治体の実施状況によります。制度の全体像は国土交通省「住宅セーフティネット制度」で確認できます。
年金生活者の賃貸審査で見られる6項目
1.総住居費と継続性
年金が継続して受給できることに加え、家賃・共益費・保証料等を払った後に生活費が残るかを見られます。借入返済や高額な固定支出がある場合は、年金額だけでは判断できません。
2.収入を証明できる書類
申込書に年金額を書くだけでは確認が終わらないことがあります。最新の通知書と実際の入金を確認できる資料を準備すると、追加提出による停滞を減らせます。
3.本人確認と申込内容の一致
氏名、住所、生年月日、年金額、転居理由などに食い違いがあると確認が増えます。記憶が曖昧な項目を推測で埋めず、不動産会社へ確認してから記載してください。
4.本人・緊急連絡先への連絡
電話番号の誤り、知らない番号をすべて着信拒否している、緊急連絡先へ説明していないといった状態は、審査が止まる原因になります。申込前に、電話が入る可能性と物件名を本人・緊急連絡先の双方へ伝えます。
5.保証商品ごとの確認項目
個人信用情報機関を利用する保証商品では、クレジット等の取引状況が判断材料になることがあります。一方、独自の情報と基準で審査する商品もあります。ただし、会社の分類だけで「通りやすい」とは断定できません。商品、申込者、物件条件の組合せで判断されます。
6.貸主・管理会社が求める入居条件
保証会社が承認しても、貸主審査で否決されることがあります。高齢者向けの見守りサービス、身元引受け、残置物対応などを入居条件とする物件もあるため、問い合わせ時に条件と費用を確認してください。
審査に落ちる原因を年齢だけで決めつけないために、高齢の親が賃貸審査に落ちる7つの理由と対策も併せてご覧ください。
申込み前にそろえる年金・本人確認書類
| 書類 | 確認できること | 注意点 |
|---|---|---|
| 年金額改定通知書 | 改定後の年金年額 | 最新年度のものを用意 |
| 年金振込通知書 | 各支払期の振込額・控除額 | 1回分を月額と誤認しない |
| 通帳・入出金明細 | 本人名義口座への実際の入金 | 提出期間・範囲は申込先の指示に従う |
| 公的年金等の源泉徴収票 | 前年の支払金額など | 年金の種類によって発行対象が異なる |
| 本人確認書類 | 氏名・住所・生年月日 | 有効期限と現住所を確認 |
| 預貯金の証明 | 収入不足を補う資力 | 有効か、必要残高はいくらかを先に確認 |
提出書類は保証会社・管理会社・物件によって異なります。個人情報を必要以上に送らず、かといって画像を加工・切り抜きして確認不能にもしないよう、提出先と必要範囲を確認してください。
申込前チェック
- 最新の年金額改定通知書がある
- 直近の振込額を通帳等で確認できる
- 年額・2か月分の振込額・家計上の月額を区別できている
- 本人確認書類の住所が現状と一致している
- 緊急連絡先本人から了承を得ている
年金が少ないときに取る7つの対策
1.総住居費を下げる
最も直接的な対策です。家賃だけでなく、共益費、保証料、見守り費を含む月額合計で比較します。駅徒歩、築年数、広さ、設備、エリアのどこを譲れるかを先に決めると探しやすくなります。
2.預貯金審査が可能か先に聞く
預貯金があっても、すべての保証会社が収入不足の代わりとして扱うわけではありません。「預貯金を含めて判断できる物件か」「必要書類と残高の目安は何か」を申込前に不動産会社へ確認してください。
3.親族の支援方法を具体化する
子どもが関われる場合は、緊急連絡先、家賃補助、連帯保証、同居など、何が可能かを整理します。子どもが連帯保証人になれば必ず通るわけではなく、保証会社利用が必須の物件もあります。詳しくは親の賃貸審査で子どもが連帯保証人になる場合の注意点をご覧ください。
4.保証会社の選択肢がある物件を探す
「独立系なら通る」と会社分類だけで指定するのではなく、「第一候補が否決された場合、別の保証商品へ再審査できる物件か」と聞く方が実務的です。物件によって保証会社が固定されていることもあります。
5.URの前払い・貯蓄・特例を確認する
URの収入基準に届かなくても、家賃等の一時払い、家賃の100倍を基準とする貯蓄制度、収入基準の特例を使える場合があります。まとまった預貯金や親族支援がある方は、希望住戸を決める前にUR窓口へ確認してください。
6.公営住宅・セーフティネット住宅・居住支援を並行する
民間賃貸だけに絞らず、公営住宅、セーフティネット登録住宅、居住サポート住宅、居住支援法人への相談を同時に進めます。募集時期、所得要件、対象者、費用、提供サービスは地域や事業者で異なります。居住支援法人の相談やサービスがすべて無料とは限らないため、費用も確認してください。
7.申込み前の問い合わせで条件を伝える
内見後に高齢・年金受給を伝えると、対象外だった場合に時間を失います。最初の問い合わせで必要情報を簡潔に伝え、申込み可能かを確認します。
不動産会社への伝え方
「78歳の母が単身で入居します。年金は年額144万円、実際の振込は2か月で約21万4,000円、預貯金は○万円です。子どもの私が緊急連絡先になれます。総住居費4万円前後で、高齢者の申込み実績があり、保証会社に選択肢のある物件はありますか」
部屋探し全体の順番は、70代・80代でも借りられる賃貸の探し方|審査前の7手順で詳しく解説しています。
年金と賃貸審査のよくある質問
年金月10万円で家賃5万円は借りられますか?
年金額だけでは判断できません。ただし、実入金10万円に対して家賃だけで50%となり、共益費等を含めればさらに高くなります。審査以前に生活余力が小さいため、家賃を下げる、親族支援を明確にする、預貯金を使える制度を探す、公的住宅・居住支援を併用することを勧めます。
年金月12万円なら家賃4万円は安全ですか?
家賃だけなら約33%ですが、共益費、保証料、見守り費等を加えると比率は上がります。医療費・介護費・借入返済も確認し、毎月の収支表を作ってから判断してください。審査通過を保証する数字でもありません。
年金は額面と手取りのどちらを書きますか?
申込書の項目と申込先の指定に従います。年収欄なら通知書上の年額を求められることが多い一方、実際の支払能力確認として通帳や振込通知書の提出を求められることもあります。不明なら空欄のまま担当者へ確認し、数字を使い分けて有利に見せようとしないでください。
預貯金はいくらあれば審査に通りますか?
民間賃貸に共通の必要残高はありません。預貯金を判断材料にしない商品もあります。URには家賃の100倍という明示基準がありますが、これはURの制度です。希望物件で預貯金審査が可能か、必要書類とともに確認してください。
年金証書だけで収入証明になりますか?
年金証書は受給権の確認には役立ちますが、現在の年額や実際の振込額を十分確認できない場合があります。最新の年金額改定通知書、年金振込通知書、通帳等を求められる可能性を想定してください。
セーフティネット住宅なら必ず入居できますか?
必ず入居できるわけではありません。登録された受入対象属性を理由に拒まない住宅ですが、支払能力や契約条件等の確認は残ります。対象属性、保証条件、総費用を物件ごとに確認してください。詳しくは高齢者がセーフティネット住宅を探すときの確認点をご覧ください。
まとめ|年金額より先に「総住居費と証明」を整える
- 民間賃貸に共通する「年金○万円なら合格」という基準はない
- 年額、2か月ごとの振込額、毎月使える金額を分けて確認する
- 物件予算は家賃ではなく、共益費や保証料等を含む総住居費で決める
- URと高齢者住宅財団の数字は、それぞれの制度だけに適用される
- 通知書、通帳、本人確認書類、緊急連絡先を申込前にそろえる
- 年金が少ないときは、預貯金、親族支援、別保証商品、公的住宅・居住支援を並行して検討する
最初に行うことは、最新の年金振込通知書と通帳を見て、毎月の実入金と固定支出を1枚にまとめることです。そのうえで、年齢、年金年額、預貯金、緊急連絡先、希望する総住居費を不動産会社へ伝えてください。
保証会社の選び方を先に確認したい方は、高齢者が審査に通りやすい保証会社は?7項目を保証会社OBが解説も参考にしてください。
※本記事は一般的な情報と筆者の家賃保証実務経験をもとにした解説です。個別の審査結果を保証するものではありません。制度・審査条件・費用は変更されることがあるため、申込み前に各事業者・自治体の最新情報をご確認ください。
高齢者・無職で一般賃貸が難しい場合