高齢者

70代・80代でも借りられる賃貸の探し方|審査前の7手順

結論からお伝えすると、70代・80代でも賃貸住宅は借りられます。ただし、若い世代と同じように物件サイトから順番に問い合わせるだけでは、断られ続けることがあります。先に「家賃を払い続けられる根拠」「緊急時に動ける人」「入居後の見守り」を整え、高齢者の入居に慣れた窓口へ相談することが近道です。

私は家賃保証会社に15年以上在籍し、複数社で審査・契約・督促などの実務に携わり、1,000社を超える不動産会社・管理会社・大家さんを担当してきました。その経験から、年齢だけを気にするより、貸主や保証会社が判断できる材料を最初にまとめる方が結果につながりやすいと感じています。

まず押さえる4つの結論

  • 70代・80代という年齢だけで、すべての賃貸が借りられなくなるわけではない
  • 年金額だけでなく、家賃とのバランス・預貯金・連絡の確実性も見られる
  • 子どもがいても「連帯保証人」「緊急連絡先」「見守り担当」の役割は別々に確認する
  • 民間賃貸で難しい場合は、UR・公営住宅・セーフティネット登録住宅・居住サポート住宅へ切り替える

70代・80代でも賃貸は借りられる|年齢以外の準備が重要

高齢者の申込みで貸主や管理会社が気にするのは、単なる年齢の数字ではありません。主に「家賃の支払い」「連絡が取れなくなった場合」「病気や死亡後の対応」に不安がないかを確認します。

確認されやすい点 貸主側の不安 申込前に用意するもの
支払い能力 年金で家賃を払い続けられるか 年金の証明、通帳、預貯金資料
連絡性 本人と連絡が取れなくならないか 本人の携帯電話、確実につながる連絡先
緊急時の対応 急病や認知機能低下の際に誰が動くか 親族・支援者の氏名、続柄、電話番号
入居後の支援 孤立や死亡時の対応が不明 家族の訪問、見守りサービス、居住支援

「高齢だから落ちた」と思っていても、実際には家賃設定、書類不足、緊急連絡先、電話不通などが重なっていることがあります。詳しい原因は、高齢の親が賃貸審査に落ちる主な理由で整理しています。

70代・80代の賃貸探しを成功させる7手順

手順1|無理なく払い続けられる家賃を決める

最初に、年金の手取り額、毎月の医療・介護費、預貯金を確認します。「家賃は収入の3分の1まで」という目安だけで決めるのは危険です。高齢になるほど医療費や生活支援費が増える可能性があるため、入居後も余裕が残る金額に抑えてください。

保証会社ごとに審査基準は異なり、家賃と収入だけで結果が決まるわけではありません。ただし、希望家賃を下げることは、貸主と保証会社の両方の不安を減らす有効な方法です。年金額と家賃の考え方は、年金はいくらあれば賃貸審査に通るのかも参考にしてください。

手順2|家族・支援者の役割を先に決める

子どもや親族がいる場合は、申込前に次の役割を確認します。すべてを同じ人が担う必要はありません。

  • 緊急連絡先:本人と連絡が取れないときに連絡を受ける人
  • 連帯保証人:契約に基づき家賃などの債務を負う人
  • 見守り担当:定期的な訪問や安否確認を行う人
  • 緊急時の対応者:入院、施設入居、死亡時などに管理会社と連絡を取る人

連帯保証人を立てても、指定された保証会社への加入が必要な物件はあります。また、子ども名義で契約して親だけを住まわせる方法は、貸主の承諾なしに進めてはいけません。実際に住む人を正しく伝え、契約方法を不動産会社へ確認してください。詳しくは、子どもが連帯保証人になれば親の審査は通るのかで解説しています。

手順3|審査資料を一度に提出できるようにする

保証会社の現場では、書類が小出しになるほど確認が止まりやすくなります。物件によって必要書類は違いますが、少なくとも次を用意しておくと動きやすくなります。

申込前チェックリスト

  • 本人確認書類
  • 年金証書、年金振込通知書、所得を確認できる書類
  • 年金の入金や預貯金を確認できる通帳等(求められた場合)
  • 本人の携帯電話番号
  • 緊急連絡先の氏名・続柄・住所・電話番号
  • 連帯保証人を求められた場合の勤務先・収入資料
  • 見守りサービスや介護サービスを利用している場合は、その内容と連絡先

提出資料は不動産会社や保証会社の指示を優先してください。マイナンバーなど、求められていない情報まで送らないことも大切です。

手順4|高齢者の入居実績がある不動産会社へ先に相談する

物件を何十件も選んでから問い合わせるより、最初に高齢者の仲介実績を確認した方が早く進みます。電話や問い合わせフォームでは、次のように具体的に伝えてください。

不動産会社への相談例

「80歳の母が一人で住む部屋を探しています。年金は月○万円、希望家賃は○万円です。子どもの私が緊急連絡先になり、月○回訪問できます。必要であれば見守りサービスも検討します。高齢者の入居実績がある物件や、利用できる保証会社が複数ある物件を紹介していただけますか」

年齢を隠して問い合わせると、申込段階で話が戻ります。最初から条件を開示し、大家さんや管理会社へ事前確認してもらう方が、無駄な内見や申込みを減らせます。

手順5|物件と保証会社をセットで確認する

借主が保証会社を自由に選べるとは限りません。貸主や管理会社が指定していることが一般的です。ただし、不動産会社が複数の保証会社を扱っている物件なら、1社で難しくても別の保証プランを検討できる場合があります。

不動産会社には「高齢者の審査実績がある保証会社か」「1社で難しい場合に別の保証会社へ切り替えられるか」を確認してください。信販系・独立系という分類だけで合否を決めつけず、その物件で実際に利用できる選択肢を確認することが重要です。詳しくは、高齢者が審査に通りやすい保証会社の特徴をご覧ください。

手順6|民間賃貸以外のルートも同時に探す

急いでいるときほど、通常の物件サイトだけに絞らないでください。次の選択肢を同時に動かすと、候補が広がります。

選択肢 向いているケース 確認点
セーフティネット登録住宅 高齢者を受け入れる登録住宅を探したい 物件ごとの受入対象と入居条件
居住サポート住宅 安否確認や見守りも必要 地域の物件数、支援内容、費用
UR賃貸住宅 保証人・保証会社なしで探したい 収入・貯蓄等の申込資格と空室
公営住宅 低所得で家賃負担を抑えたい 自治体ごとの資格、募集時期、抽選
サービス付き高齢者向け住宅 生活相談や安否確認が必要 家賃以外のサービス費、介護体制

手順7|申込後の電話と追加書類へ早く対応する

保証会社からの電話は、本人確認や保証加入の意思確認であることがあります。電話に出られなかった場合は、番号を確認して早めに折り返してください。本人・緊急連絡先・勤務先などへの連絡方法は会社や申込内容によって異なり、電話がないだけで不合格とは限りません。

3営業日ほど動きが見えない場合は、不動産会社へ「大家さん・管理会社・保証会社のどこで確認中ですか」と尋ねます。審査の流れを詳しく知りたい方は、保証会社の審査が進む社内フローも確認してください。

2026年に使える高齢者向けの住宅支援

セーフティネット登録住宅

住宅セーフティネット制度では、高齢者を含む住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅が登録されています。ただし、「登録住宅なら誰でも必ず入居できる」という意味ではありません。物件ごとに受け入れる対象や条件があり、家賃の支払い能力などの確認も行われます。

セーフティネット住宅情報提供システム(国土交通省案内)で地域と受入対象を確認してください。制度の使い方は、高齢の親に使えるセーフティネット住宅でも詳しく解説しています。

2025年10月に始まった「居住サポート住宅」

改正住宅セーフティネット法が2025年10月1日に施行され、居住サポート住宅の認定制度が始まりました。大家さんと居住支援法人などが連携し、日常の安否確認、訪問等による見守り、生活や心身の状況が不安定になった際の福祉サービスへのつなぎを行う住宅です。

一人暮らしへの不安が大きい高齢者にとって有力な選択肢ですが、物件数や費用、支援内容は地域・住宅ごとに異なります。居住サポート住宅情報提供システムで確認してください。

居住支援法人

居住支援法人は「公的機関」そのものではなく、住宅確保要配慮者の入居支援を行う法人として都道府県が指定したNPO法人、一般社団法人、社会福祉法人などです。住宅情報の提供、相談、見守り、家賃債務保証などを行いますが、対応内容や対象地域、料金は法人によって異なります。

国土交通省の居住支援法人一覧から地域の法人を探し、「物件紹介の有無」「緊急連絡先がいない場合の支援」「見守りの内容」「費用」を確認してください。

UR賃貸住宅

UR賃貸住宅は連帯保証人と家賃保証会社が不要です。一方で、収入・貯蓄などの申込資格があります。公式案内では、貯蓄基準制度を利用する場合の基準貯蓄額は原則として月額家賃の100倍です。家賃6万円なら600万円が目安になります。また、一定期間の家賃等を前払いする制度や、高齢者向けの収入基準の特例もあります。

条件は申込方法によって異なるため、UR賃貸住宅のお申込み資格で最新情報を確認してください。

高齢者住宅財団の家賃債務保証

一般財団法人高齢者住宅財団には、60歳以上の方などを対象に、連帯保証人の役割を担う家賃債務保証制度があります。ただし、財団と基本約定を締結した住宅が対象で、入居者が単独で好きな物件へ利用できる制度ではありません。

公式案内では、2年間の保証料は月額家賃の35%、最低保証料は1万円です。利用できるかどうかを家主・管理会社へ確認してください。詳細は、高齢者住宅財団の家賃債務保証で確認できます。

賃貸審査に落ちたときの立て直し方

審査に落ちた後、同じ申込内容のまま物件だけを変えても、同じ理由で止まることがあります。まず不動産会社に、可能な範囲で「貸主判断なのか」「保証会社の審査なのか」「書類や連絡先の問題なのか」を確認してください。保証会社は否決理由を開示しないことが多いため、回答が得られない場合もあります。

止まった可能性 次の一手
貸主・管理会社が高齢者入居に慎重 高齢者相談可の物件、セーフティネット登録住宅へ切り替える
家賃と年金のバランス 希望家賃を下げ、預貯金や家族の支援を正しく申告する
緊急連絡先・見守りが弱い 親族、居住支援法人、見守りサービスの利用を検討する
保証会社の審査 別の保証会社を利用できる物件か不動産会社へ確認する
電話不通・書類不足 連絡可能な時間を伝え、必要書類をまとめて再提出する

保証会社OB・保科 レンの現場感覚

高齢者の審査では、年齢を若く見せる工夫よりも、申込内容の整合性が重要です。「誰が住むのか」「家賃を何で払うのか」「本人と連絡が取れないとき誰が動くのか」を一度で説明できる申込みは確認が進みやすくなります。反対に、申込書と電話回答が食い違う、書類を小出しにする、折り返しがない状態は避けてください。

70代・80代の賃貸探しでよくある質問

80代の一人暮らしでも賃貸を借りられますか?

可能です。ただし物件ごとの入居条件があり、年金・預貯金、緊急連絡先、見守り体制などを確認されることがあります。通常の民間賃貸に加え、居住サポート住宅や居住支援法人にも同時に相談してください。

年金だけでも審査に通りますか?

年金も継続収入として扱われますが、年金額だけで一律に決まりません。希望家賃、預貯金、他の支出、保証会社や貸主の基準によって判断が変わります。年金振込通知書など、収入を証明できる書類を用意しましょう。

連帯保証人がいないと借りられませんか?

家賃保証会社を利用する物件や、保証人・保証会社が不要なUR賃貸住宅などがあります。ただし保証会社を使う場合でも、緊急連絡先を求められることがあります。連帯保証人と緊急連絡先は別の役割です。

頼れる親族がいない場合はどうすればよいですか?

居住支援法人、市区町村の住宅担当・福祉担当、地域包括支援センターへ相談してください。法人によっては物件探し、見守り、家賃債務保証などに対応しますが、提供内容と費用はそれぞれ異なります。

認知症があっても本人名義で契約できますか?

認知症という診断名だけで一律に決まるものではありませんが、契約内容を理解して意思表示できるかが重要です。判断能力に不安がある場合は、不動産会社だけで進めず、家族、地域包括支援センター、必要に応じて専門家へ相談してください。詳しくは、認知症の親の賃貸問題と家族が準備することをご覧ください。

まとめ|物件探しの前に「審査できる材料」をそろえる

70代・80代でも、探す窓口と申込前の準備を変えれば賃貸住宅を借りられる可能性はあります。まず次の順番で動いてください。

  1. 年金・預貯金・生活費から無理のない家賃を決める
  2. 緊急連絡先、連帯保証人、見守り担当の役割を整理する
  3. 必要書類をまとめる
  4. 高齢者の入居実績がある不動産会社へ条件を先に伝える
  5. 複数の保証会社を検討できる物件か確認する
  6. UR・公営住宅・登録住宅・居住サポート住宅も同時に探す
  7. 申込後の電話と追加書類へ早く対応する

「何件申し込むか」より、「貸主と保証会社が判断できる情報を最初にそろえるか」が重要です。断られた場合も、同じ申込みを繰り返さず、止まった可能性を一つずつ修正してください。

執筆者:保科 レン(レントさん)|家賃保証会社に15年以上在籍、複数社を経験

本記事は2026年8月時点の公的情報を基にした一般的な解説です。審査基準、募集条件、支援内容、費用は物件・保証会社・自治体・支援法人によって異なります。申込み前に各窓口へ最新情報をご確認ください。

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