高齢者

認知症の親の賃貸問題―家族が知っておくべきこと

保証会社OB・15年の現場経験をもとに執筆

「親が認知症になってきた。今の賃貸はどうなる?新しい部屋は借りられるのか?」――認知症と賃貸の問題は、多くの家族が突然直面する課題です。認知症が進むと契約能力・緊急連絡先・孤独死リスクなど、賃貸に関わるあらゆる場面で問題が起きやすくなります。保証会社の現場で数多くの案件を見てきた立場から、家族が知っておくべきことをまとめます。

認知症が賃貸に与える3つの問題

認知症が進行すると、賃貸に関わる場面で以下の3つの問題が起きやすくなります。

問題 1

家賃の支払い忘れ・滞納

認知症が進むと、家賃の振込や口座引き落としの管理が難しくなります。「払ったつもり」「引き落とされているはず」という認識のまま滞納が続くケースが現場でも多くありました。保証会社への連絡が遅れると、督促・代位弁済のフェーズに進んでしまいます。

問題 2

緊急連絡先への連絡が取れなくなる

保証会社や管理会社が緊急連絡先(子ども)に連絡しようとしても、本人が「連絡しないでほしい」と拒否したり、電話番号を変えてしまったりするケースがあります。家族が状況を把握できないまま問題が大きくなることがあります。

問題 3

孤独死・火災リスクへの懸念

認知症が進行した一人暮らしでは、孤独死・火の消し忘れによる火災・徘徊などのリスクが高まります。大家・管理会社がこのリスクを理由に退去を求めるケースや、更新を拒否するケースも現実に起きています。

保証会社OB・保住 誠の現場感覚

認知症の入居者に関するトラブルで最も多かったのは「家賃の滞納」です。本人は払っているつもりで、気づいたら2〜3ヶ月滞納していたというケースが何度もありました。家族が早期に気づいて介入することが、問題を最小化する唯一の方法です。

認知症になると契約はどうなるのか

法律上、認知症が進んで「判断能力がない」と認定された場合、本人が単独で契約行為をすることが難しくなります。

現在の契約(既存の賃貸)はどうなるか

認知症になっても、現在の賃貸契約はすぐに無効になるわけではありません。すでに締結した契約は有効なまま継続されます。ただし以下の点で問題が生じる可能性があります。

⚠️ 注意が必要な場面

  • 契約の更新手続き:更新時に本人の署名が必要な場合、判断能力が問われる
  • 大家からの退去要求:認知症による生活上のトラブルを理由に退去を求められる場合がある
  • 解約手続き:施設入居などで解約する際、本人の判断能力が必要になる

新しく契約を結ぶ場合はどうなるか

認知症が進んで判断能力が著しく低下している場合、新たな賃貸契約を結ぶことは法律上難しくなります。この場合、成年後見人が代わりに契約を行う必要があります。

認知症の親が新しく賃貸を借りられるか

認知症の段階によって、新しく賃貸を借りられるかどうかが変わります。

認知症の段階 契約能力 審査への影響 対応策
軽度 あり 通常審査と同様 子どもが連帯保証人・緊急連絡先になる
中等度 低下している 審査が難しくなる 居住支援法人・セーフティーネット住宅を活用
重度 ない 単独契約不可 成年後見人が代理で契約・施設入居を検討

保証会社OB・保住 誠の現場感覚

審査の場面では「認知症かどうか」を保証会社が直接確認することはありません。ただし、電話確認で会話がかみ合わない・書類の記載内容が不自然・緊急連絡先が機能しないなどの状況が重なると、審査が止まりやすくなります。家族が早めに関与して申込をサポートすることが、審査を円滑に進める最善策です。

成年後見制度と賃貸の関係

認知症が進んで判断能力が低下した場合、成年後見制度を利用することで、家族(または専門家)が本人に代わって法律行為を行えるようになります。

成年後見制度でできること

✅ 賃貸に関して後見人ができること

  • 本人に代わって賃貸契約を締結する
  • 家賃の支払い管理を行う
  • 契約の更新・解約手続きを代行する
  • 施設入居に向けた住まいの整理を行う

成年後見制度の種類

種類 対象 特徴
後見 判断能力が全くない 後見人が全ての法律行為を代理できる
保佐 判断能力が著しく不十分 重要な法律行為に保佐人の同意が必要
補助 判断能力が不十分 特定の行為について補助人がサポート

⚠️ 成年後見制度の注意点

  • 申立てから審判まで数ヶ月かかることがあります。早めに準備を始めることが重要です
  • 後見人には家族以外(弁護士・司法書士)が選任されるケースもあります
  • 申立て窓口は家庭裁判所です。市区町村の福祉窓口でも相談できます

家族が今すぐやるべきこと

認知症の問題は「なってから動く」では遅いケースがほとんどです。今すぐできることを優先順位順に整理します。

1

家賃の支払い状況を確認する

通帳・引き落とし状況を確認して、滞納が発生していないかチェックします。口座振替の設定を子どもが管理できる状態にしておくことも重要です。

2

管理会社・保証会社に家族として連絡先を登録する

緊急連絡先に登録されている子どもの情報(電話番号・住所)が最新かどうか確認します。変わっている場合は管理会社に連絡して更新してもらいましょう。

3

賃貸借契約書の内容を確認する

契約書の保管場所・更新時期・保証会社名・保証料の支払い方法を把握しておきます。親が管理できなくなった場合に備えて、家族が内容を把握していることが重要です。

4

将来の住まいの選択肢を考え始める

認知症が進んだ場合の住まいとして、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)・グループホーム・特別養護老人ホームなどを早めに調べておきます。施設は空き待ちが長い場合が多いため、早期の情報収集が重要です。

5

任意後見契約・成年後見制度の準備を始める

判断能力があるうちに「任意後見契約」を結んでおくことで、認知症が進んだ後も家族が適切に対応できるようになります。市区町村の福祉窓口や司法書士に相談してみましょう。

保証会社OB・保住 誠の現場感覚

認知症による賃貸トラブルで最も後悔しやすいのは「もっと早く動いていれば」という声です。家賃の滞納・契約更新の失念・施設への移行が間に合わないなど、早期に把握していれば防げた問題がほとんどです。認知症の診断が出た段階で、賃貸に関する整理を始めることを強くお勧めします。

まとめ

この記事のポイント

  • 認知症が進むと家賃滞納・緊急連絡先の機能不全・孤独死リスクの3つが問題になりやすい
  • 既存の賃貸契約はすぐに無効にはならないが、更新・解約時に問題が生じやすい
  • 重度の認知症では新規の賃貸契約に成年後見人が必要になる
  • 成年後見制度の申立ては数ヶ月かかるため、早めに準備することが重要
  • 家族が今すぐやるべきは「家賃確認・連絡先更新・契約書把握・将来の住まい検討」の4つ
  • 認知症の診断が出た段階で、賃貸に関する整理を早期に始めることが最大の予防策

認知症と賃貸の問題は、早期に動くかどうかで結果が大きく変わります。「まだ大丈夫」と思っているうちに手を打つことが、家族全員にとっての最善策です。

認知症の親の賃貸問題でお困りの場合、
保証会社OBが個別にアドバイスします。

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